今年の目玉「配当の損益通算」とは?
さて、去年の税制改正の目玉の一つ、配当の損益通算。譲渡所得での損失と配当所得を損益通算できるという、ありがたい制度です。
どういうことかと言うと。
たとえば株の売買で100万円の利益が出た場合、所得税として10万円を国などに納めます。(国税7%、地方税3%)
では逆に、株で100万円の損をした場合、国などから私は10万円をもらえるでしょうか?
普通はそんなことはありません。損が出た場合は、納める所得税が0円になるだけです。
ところが、いっぽうで株や投資信託などを持っていて、配当所得が生じたとしましょう。
100万円の配当がもらえたら、やっぱり10万円(10%)を所得税として納めます。
では、「株の売買で100万円の損」をして、かつ「株の配当で100万円もらった」場合。
「株による儲け」は差し引きで0円ということになりますが、納める税額はいくらになるでしょう?
2008年度までは、株売買の税が0円、配当の税が10万円で、合計10万円を納める必要がありました。「株による儲け」は差し引き0円なのに!
これは、株の売買は「譲渡所得」、配当は「配当所得」というように、「儲けの種類が違う」ことが理由でした。
ところが2009年度からは、両者の損益を通算できるようになったのです!
今の例だと、儲けが差し引き0円なので、納める税額も0円となります。ラッキー!(儲けが出てないのにラッキーと喜んでいていいのかという問題はありますが)
株売買がマイナスになることはあっても、配当がマイナスになることはありませんから、株を持っている人にとってはちょっと嬉しい税制改正です。
「配当の損益通算」と「譲渡損失の繰越」を組み合わせる場合のちょっとした罠
さらに、株の売買で生じた損は、最大3年間、繰り越すことができます。おととし株の売買で80万円損して、去年売買で100万円儲けた場合は、プラマイして「去年の株の儲けは20万円」という計算をしていいのです。
儲けが出た場合、古い損から順番に消し込みます。
たとえば、
2007年度 -30万
2008年度 -40万
2009年度 +50万
だったとしましょう。'09年の利益をそれまで繰り越された損失で帳消しにする場合、古い順に差し引いて、
2007年度 ±0万
2008年度 -20万
2009年度 ±0万
という扱いになります。
このように、譲渡損失の繰越は古い順に消えますが、「配当との損益通算」をする場合、必ずしも古い順から消えないので注意が必要です。
というのは、損益通算はまず当年度でおこない、通算しきれない分を繰越分から充当するからです。
たとえば、譲渡損失が
2007年度 -20万
2008年度 -20万
2009年度 -30万
だとします。
2009年度の配当所得が+30万だった場合、古い順から消して、
2007年度 ±0万
2008年度 -10万
2009年度 -30万
…となってくれれば助かるのですが、そうはなりません。
譲渡損失と配当所得はまず当年度で通算するため、
2007年度 -20万
2008年度 -20万
2009年度 ±0万
となり、'07年度の損失は残ったままです。2010年じゅうに儲けを出さないと、3年間の繰越期限を迎えてしまうハメになります。
国税庁の確定申告書等作成コーナーで申告書を作る場合、この辺の計算は自動でおこなってくれるので間違える心配はありません。
(が、このルールを理解しておかないと、私のように「何で古い順じゃなくて新しい損から消えるんだろう…と悩むことになります)
配当の損益通算は、来年からはもっとラクに
今回は、証券会社から送られてくる支払通知書を自分で計算したり転記したりするためいろいろ面倒ですが、次年度分からは証券会社の口座内で自動的に通算できるようになりますので、まったく手間いらずになります。損益通算の計算を自分でやってみて分かったのは、意外と特別分配金が多かったこと。特別分配金は非課税なので源泉徴収されておらず、したがって損益通算もできません。
2009年は株の売買では損を出しましたが、配当でプラスになるはず…と思っていたら、所得税的にはマイナスのままでした。まだ前年の繰越損失が山のようにあるのに……。
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