NAS「Maxtor Shared Storage II」の内蔵HDDを交換しました。手順を記しておきます。
(と言っても2chの
NAS総合スレPart13 (LAN接続HDD)に書いてあるとおりなんですが)
必要なもの
- 新しいHDD(3.5インチSATA)
- NASなのであまり速度は必要ありません。HDDの読み書きが速くても、ネットワークのスピードとかに足を引っ張られるためです。なので値段の安い5400rpmで充分。むしろ遅いHDDのほうが、発熱も少なくて安心です。
- プラスドライバー
- ご家庭にある普通のネジ回しでOK。
- 作業用PC
- 新HDDにNASのファームウェアを導入するときに必要です。Windowsだけで作業を完結するのは難しいですが、CDやUSB起動ができるマシンなら、そこからLinuxを起動できるので大丈夫。 SATAのHDDを直接接続できないPCの場合(ノートPCなど)は、SATA-USB変換アダプタも用意してください。
- NASの保証が無効になる覚悟
- このNASは、「剥がすと保証は無効になるよ」というシールを剥がさないと分解できません。もっとも国内正規流通のない輸入品ですから、そもそもメーカー保証なんてないに等しいですが。
なお、保証を無効にしてでも交換したくなった理由は、前記事
舶来NAS「Maxtor Shared Storage II」搭載HDDに潜む恐ろしい罠 で。
まずバックアップ
NASの内容をどこかにバックアップします。
一応、めんどくさがりの方のために「旧HDDから新HDDに直接データを移す方法」も後で紹介します。
ただし、HDD交換作業中にうっかり手を滑らせたりすると取り返しのつかないことになりますので、できれば事前にデータは複製しておきましょう。
NASファームウェアを公式サイトからダウンロードして、イメージファイルを抽出
現在入手できるファームウェアの最新版は「Maxtor Central Axis」化を伴う
バージョン3.5.74ですが、今回は「Maxtor Shared Storage II」時代の最終版となる
バージョン3.1.28を使うことにしました。バージョン上げたければ後からアップデートできますし。
ダウンロードした mss_v_3_1_28.zip を展開して MSS_V_3_1_28.bin を取り出します。
拡張子がbinですが実はtgzなので、さらに展開してイメージファイルを取り出しておきます。
% file MSS_V_3_1_28.bin
MSS_V_3_1_28.bin: gzip compressed data, from Unix, last modified: Fri Jul 6 02:02:08 2007
% tar ztvf MSS_V_3_1_28.bin
-rw-r--r-- yoh/yoh 104857600 2007-03-17 02:43 coyote-3.1.28.img
-rw-r--r-- root/root 52 2007-07-06 02:02 coyote-3.1.28.img.md5sum
-rwxr-xr-x yoh/yoh 182 2007-06-28 08:23 mxo_upgd_postscript.sh
% tar zxf MSS_V_3_1_28.bin
% file coyote-3.1.28.img
coyote-3.1.28.img: Linux rev 1.0 ext3 filesystem data (large files)
新HDDのパーティションを切ってフォーマット
新HDDをそのままNASに取り付けても使えません。あらかじめHDDの初期化が必要です。
作業はUnix系の環境で行います。「Windowsしかないよ!」という人は、CDかUSBメモリで起動するLinux環境を作るのが確実です。
私は
Parted Magicを使いました。「pmagic-*.iso.zip」(*はバージョン番号)をダウンロードして、ZIPファイルの中にあるISOファイルをCD-Rに焼いて、そのCDから起動するだけです。
新HDDのパーティションを次のように切ります。
sdX1 256MB 83(Linux) フォーマット不要(ファームウェア用)
sdX2 256MB 83(Linux) フォーマット不要(ファームウェア予備用)
sdX3 256MB 82(Linux swap/Solaris) (スワップ領域)
sdX4 残り全部 5(拡張領域)
├ sdX5 512MB 83(Linux) ext3(/tmp)
└ sdX6 残り全部 83(Linux) ext3(ここがファイル保存用)
sdXは各自環境で読み替えてください。ウチはsdbでした。
パーティションsdX5/6をext3でフォーマットします。sdX3はスワップ領域として初期化(mkswap)。
sdX1/2はファームウェアのイメージを直接書き込むので、フォーマットは不要です。
ファームウェアを新HDDに書き込む
先ほどダウンロードしてきたファームウェアを新HDDに導入します。GUIで作業する方法もあるのかもしれませんが、私は使い慣れたddを使いました。
% dd if=coyote-3.1.26.img of=/dev/sdX1 bs=1m
% dd if=coyote-3.1.26.img of=/dev/sdX2 bs=1m
bs(ブロックサイズ)はお好みで。(bs=1mでうまくいかない場合、いただいたコメントによると bs=4096 がいいみたいです)
Parted Magic上で作業するなら、Windows上でダウンロードしたファームウェアのイメージファイルは、USBメモリ等で運んでくるのがいいかもしれません。(Parted Magicは設定すればネットワークを使えるみたいなので、直接Parted Magic上でファームウェアをダウンロードしてくるという手もありますが)
私はWindows上で、Cygwinのddを使いました。
これで新HDDの準備は整いました。
NASを分解して旧HDDを取り外す
いよいよNASを分解します。リアパネルのネジを皮切りに、外装をはがしつつバラしていきましょう。静電気に注意。これからだんだん寒くなりますが、セーターを着て作業するのはやめましょう。
外装を留めているプラスチックの爪が外れにくいですが、頑張ってるうちにバキバキ折れちゃうと思います。折れても大した支障はありません。
ここまで開けたら、元から入っているHDDを取り外します。ネジ留めされている青いゴム足×4は新HDDに付け替えましょう。
旧HDDが
本当は「7200.11」なのにラベルは「ES.2」と書かれているのを確認して、ヤレヤレとため息でもついておきましょう。
ロットによっては本当にES.2が入ってるかもしれないので、PCにつないでチェックしてみるのも一興です。
よりみち:ファンを静かにする
「最近ファンがうるさくなった?」とお思いの方、せっかく分解したついでに、ゆるんできたファンのネジを締め直すとガタつきが減って静かになるかもしれません。ただし締め方によっては、逆に筐体と共振してうるさくなることもあるので注意。
「防振ワッシャー」みたいな便利パーツを買ってきて挟むという手もあります。私はアマゾンで
サンワサプライ TK-SS4というのを買ってみました。10コ入りで273円。2コしか必要ないで8コも余るのが難点ですが、静かになりました。
ちなみにこのサンワサプライのシリコンゴムワッシャー、穴径が4mmと少々大きめで、ファンの取り付けネジを強く締めると抜けちゃいます。アマゾンで買うなら
バリューウェーブ BS-050Sのが径2.5mmでいいかも。
新HDDを取り付けて組み立て
青いゴム足をネジ留めして、SATA&電源ケーブルを挿して、筐体を組み立てます。
電源ONして様子をみる
電源を入れます。起動中は“点滅”する電源LED(筐体正面の3つ並んでるLEDの一番上)が“点灯”状態になれば、HDD換装は成功です。後はバックアップしておいたファイルを戻しましょう。
ちなみに私のケースでは、再起動を繰り返すばかりで点灯状態になりませんでした。HDDにアクセスしていなそうなタイミングを見計らって電源をOFFにして再確認。sdX5/6をext3でフォーマットするのを忘れてました……。
おまけ:旧HDDから新HDDに直接データを移すには
旧HDDのデータをいったんバックアップしてからHDDを換装するとなると、バックアップ用に最大1TBの空きHDDが必要です。そんなに余裕ないよという場合は、旧HDDから直接、新HDDにデータを移すことも可能です。
まずは上の手順に従って、旧HDDを取り外して新HDDを取り付けます。
旧HDD内のデータは、特に暗号化されているわけでもなく/dev/sdX6に入っていますので、ext3が読めればファイルを取り出せます。Linuxなら普通にマウントするだけ。
Windowsでも
Ext2fsdなんかを使えばext3フォーマットのパーティションにアクセスできます。マウント時のオプションでcodepageをutf8にしないと、日本語ファイル名が文字化けするので要注意。